友達の中で、この人の部屋はキレイそうだな、ってひとはスグにわかるものです。実際に家に行くと、そういう人の部屋はいつ行ってもキレイに掃除されています。しかもたまたまそういう人の実家なんかに行く機会があると実家も掃除が行き届いてたりします。おそらく、部屋をキレイにするということが小さい頃からの習慣として身に染みついているのでしょう。そういう人はキレイな部屋を維持することを苦に感じたりしないものです。
逆に、部屋がちらかっていそうな友達も一目でわかります。そういう人の家に行くと、たとえ一回目に行ったときはキレイに掃除してたとしても、二回三回と遊びに行くうちに私が来ることにだんだん慣れてきて、ついにはいつ行っても散らかったままになったりします。きっと最初は一念発起したのでしょう。でも、散らかしグセは身についたものなので、簡単には治らないし、隙あらば洗濯物はソファーを埋め尽くそうと、書類はデスクに積み上がろうとするようです。
お金についても同じことが言えます。お金の貯まる人と貯まらない人とでは、身についてる行動パターンが全く違いす。細かいことは書きませんが、お金が貯まる人は自然と低コスト高パフォーマンスの行動ができるものです。なにより毎月かかる固定費が小さいので、わざわざ心がけて質素倹約しなくてもお金は自然に貯まるし、お給料が多少低くても不思議といつも余裕があって幸せそうです。
対してお金の貯まらない人は、どんなにお給料をもらっていても有意義な使い方ができず、なにごとにつけても高コスト体質なのでいつも汲々しています。毎月赤字と黒字を行ったり来たりしてると、時々一念発起して「よし、もっと倹約して、お金を貯めるぞ!」と思ったりもしますが、ご飯を質素にして、外食やお酒を減らして、遊ぶのを我慢しても固定費が大きいからあまり効果が上がらず、結局元の木阿弥、赤字と黒字を行ったり来たりしてるに逆戻りです。
私は会社を経営した経験がないのであまり偉そうなことは言えませんが、何百社もの財務諸表を5年分も10年分も見ていると、健全な財務体質が悪くなることも、不健全な財務体質が良くなることもほとんどないということに気づかされます。余裕をもって経営している企業は10年たっても余裕があるし、帳尻を合わせることに必死な企業は10年たっても財務はガチャガチャです…もちろん10年後も存続してればの話ですが。大きい企業よりも小さい企業、古い企業よりも新しい企業の方がその傾向は顕著です。
安定した成長には売上と経常利益の無理のない増加、株主資本の順調な積み増し、高い自己資本利益率、健全なレバレッジ、健全なキャッシュフローなどなど、諸々の堅固な財務体質が必要条件になります。でも、こうした財務体質は一朝一夕に変わるものではなく、企業そのものの体質、身に染みついた行動パターンに他ならないのです。新興企業なら、それはもう社長さんの生き方そのものといっても良いかもしれません。
新興企業への長期投資を考えたとき、一番の不安は会社自体が消えて無くなってしまうことです。そうでなくても、例えば安値圏のMBOやTOBで市場から退場してしまったら、株主としては大打撃です。ですが財務諸表は正直なものです。財務の健全さだけではなく、その会社の姿勢、経営に対する社長の誠実さ不誠実さを隠すことはできません。そして投資家は、「財務の堅実さも会社や社長の誠実さも滅多なことでは変わらない」ということを、ぜひ覚えておくべきでしょう。