2012年11月8日木曜日

習李体制の目玉は中国版「所得倍増計画」と「全総」になる???

 18大が始まり、胡錦濤は活動報告の中で、今後は都市と農村の格差是正に取り組み、2020年までに中国は「GDPと国民所得の倍増(2010年比)」を目指すと目標を掲げました。これは、名目成長率7〜8%を今後8年間に渡り維持するという表明でもあります。「地域間の均衡ある発展」と「国民所得の倍増」・・・どこかで聞いた様な文言ですが、日本の1961〜70年の政策を意識しているのは明らかです。恐らくそのための具体的な「基本計画」の様なものが近い内に発表されるでしょう。タイトルにも書いた通り、それは中国版「所得倍増計画」と中国版「全国総合開発計画」の様なものになるはずです。もちろん中共は日本の高度経済成長をよく研究しているので、名前倒れになった全総の様な政策にはならない様に用心深い計画を策定するとは思いますが・・・

 でも、世界の生産額の3〜4%の国が外貨獲得で生産額を倍増するのとはわけが違います。中国は2010年時点で既に世界の生産額の9.1%を占める超大国だったので、更に9.1%を世界から毟り取るとしたら、管理フロート制維持の恐ろしく暴力的な政策にならざるを得ないでしょう。中共のことですので、腹の底では「世界人口の20%を占める中国が、世界の富の20%を得て何が悪い」と思っているかもしれませんが、その反面、管理フロート制を維持したままでの更なる急成長は中共独裁を脅かしかねないインフレ圧力をもたらすでしょう。「パイは奪うよりも、増やした方が効率が良い」と考えるのが自然ではないでしょうか。

 中国は7〜8%の成長を維持しつつ、インフレ率を3%前後に抑えなければなりません。そのための施策がどの様なものになるか私が予想できるわけはありませんが、最終的に以下の様な流れになるんじゃないかなあと、個人的には、今のところなんとなく想定しています。


(1)産業構造の革新による内需拡大
 今現在、中国の産業構造はまだまだ工業偏重で、GDPにおける第二次産業の占める割合は4割くらいあります。これはまさに1960年代の日本と同じ状態です。早急に2割前後まで圧縮するため、流通・サービス・金融・不動産等の第3次産業振興の施策を大々的に講じるのではないでしょうか。ですので、サブプライム=リーマン危機後の流通インフラの整備も今後急速に拡大されるかもしれませんし、金融インフラと情報インフラの高度化も急務です。特に中国は制度上の問題もありまだまだ金融インフラが未熟なため、金融システムに乗らず効率的に運用されない富がいたるところに存在します。こうした富の有効な活用でGDPを押し上げることくらいは当然考えているでしょう。 しかし、内需が伸びるためには設備投資と国内消費の拡大が必須となるため、現在の管理フロート制のままでは遅かれ早かれ「国際収支の天井」に達して外貨の枯渇をもたらすでしょう。外貨を獲得し続けるためにいずれは完全変動相場制へ移行しなければならないことを中共も理解しているはずです。

(2)東南アジア等での市場拡大
 内需を拡大する一方で、当然中国は今後も外貨を獲得していかなければいけません。そのために対欧貿易はもちろん、対米貿易、対日貿易も拡大していくでしょう。ただし、これら先進国市場は既に飽和状態にあり、特に欧州と日本は人口の減少に伴って貿易額が減っていくことも視野に入れているはずです。そこで、今後は東南アジアを中心とした比較的低所得の国々で市場開拓を目指し、こうした国々への投資を拡大していくでしょう。タイは今後も市場として有望です。ミャンマーとバングラデシュへの投資は数年で急拡大していくのではないでしょうか。懸案は仲の悪いベトナムですが、9000万人の人口を抱え、資源にも恵まれ、非常に勤勉な国民性のベトナムはミャンマーと並んで魅力的な投資先です。南沙・西沙諸島は現状で「将来への棚上げ」を中国から提案、ベトナム側が応じない場合は今後も領土・領海問題の火種が燻ることになる、といった流れになるかなと考えています。もちろん、南沙諸島には莫大な石油資源が存在するため、「棚上げ」を文字通りにとらえるべきではありませんが・・・

(3)鉱物資源の確保
 中国には世界有数の資源埋蔵国であると同時に、世界有数の資源輸入国でもあります。特に石油の輸入は年々増える一方で、大雑把に成長率に比例して増加しています。現時点で石油消費の半分を輸入に頼っており、一日あたり約500万バレル、世界の石油輸入のおよそ10%を占めます。今の状態では、今後10年間でGDPが2倍になり消費が倍増すれば石油輸入量は3倍になってしまいます。だからこそ、中国はあんなに必死になって尖閣諸島や南沙諸島に圧力をかけているのだということを忘れるべきではありません。ただし、武力で圧力をかけるばかりで実際に安定した採掘が行えない状態が続くというのは、あまり得策ではありません。経済発展を優先するならば現状で「棚上げ」とするのではないでしょうか。もしかしたら1)尖閣諸島についてはこれまで通り日本による実効支配を認める、2)石油採掘の技術を日本が提供する、3)石油資源を折半するため尖閣諸島周辺の海域を二分して石油採掘を互いに黙認する、という密約で決着するかもしれません。「なんで日本固有の領土・領海なのに資源を折半するんだ!?」と日本人にとっては腹立たしい限りですが、国際法の「衡平原則」に従えばEEZの際目は尖閣諸島寄りに設定されるはずだ、と主張する人も結構います。そうした背景を踏まえれば、互いの面子を立てる形で「黙認」するというのはあり得ない話ではありません。

以上、18大が始まったということで、ちょっと妄想を書いてみました。あんまり当たってないかな・・・