2013年6月3日月曜日

去年10月の白川貸出増加支援制度が日本版サブプライムバブルの呼び水になる かもしれない

長期金利は一段高となり、金利は上昇局面にあります。それに合わせて住宅ローンの固定金利も先月くらいから急上昇を始めました。こういった局面で銀行は変動金利をすすめてくるものです。

住宅ローンには(ある程度までは)貸し出しが貸し出しを生む様な性質があるそうです。貸し出しが増えれば増えた分だけ住宅の需給が逼迫する。すると住宅価格も上昇基調になるので住宅の需要がさらに増え、住宅ローンの需要も増えるので金利が上昇する。そうなると早めに借りて早めに買っておこうとする判断が働くので、ますます貸し出しが増えて、住宅価格も住宅ローン金利も上昇を続ける・・・ただし、住宅の需要には上限があるので、変な買い圧力が働かなければいずれ頭打ちになります。ところが、変な買い圧力が発生すると一気に住宅バブルまで雪崩れ込んでしまうことがあります。


手の早さと逃げ足の速さには定評のあるSMBCが、先月末に5年以上の固定金利を一気に引き上げた直後、「上限1000億円、7月末までの期間限定で、通常年1.5%の3年固定の住宅ローン金利を0.6%にする」と発表してきました。去年10月に決まった白川貸出増加支援制度を利用して、民間への融資増加分に対して無制限に保証される0.1%の低金利の一部を還元するということのようです。3年物に限っているので、同制度の借り換え期間が最長4年であることを考えれば今年度いっぱいくらいは銀行にとってはほぼノーリスクの還元策ということになります。当然、3年過ぎた後は3年後の固定金利または変動金利が適用されますので、その頃には金利が上昇していることを見越しての判断もあるでしょうし、消費増税の駆け込み需要が9月末までということを考えれば、「金利が上昇した3年後のお客様に唾をつけておく」という意味合いが強いのではないでしょうか。白川貸出増加支援制度の第1回供給はちょうどこの5〜6月くらいだったので、需要があれば融資枠は大幅に拡大され、7月末の期限が9月末に、最終的に今年度いっぱいまで延長されるかもしれません。その間にMUFG、みずほも追随し、大手も中小も借り手を漁り始めるのではないでしょうか。

2000年代アメリカの住宅バブルの「変な買い圧力」は何だったのでしょうか?それがあの悪名高い(?)「合成サブプライムモーゲージ債にもとづくCDO」、忘れてしまった方々のために簡単に説明しますと、低収入で返済能力の低い方々に貸し付けた住宅ローン担保証券(MBS)を寄せ集めて債務担保証券(CDO)の形で再証券化した金融商品のことです。なんでコンナモノが発明されたのか?発想は単純で「返済能力が低くてもいろんな人をたくさん寄せ集めればリスクはコントロールできるし、低リスク高金利の優良な証券になる」といった軽いノリです。「100階建てのビルを建てたら1階部分が水没することはあってもビル全体が水没することはありえない」といった比喩もありました。ところが現実は「100階建てのビル」どころか「100棟のビルの1階部分を寄せ集めた」だけなので、洪水(住宅価格の下落)が押し寄せたときにはまとめて水没(債務不履行)となったわけですが・・・いずれにせよこのCDOのおかげでアメリカのサブプライム層は本来より低金利で住宅ローンを組むことが可能となり、これが住宅価格を押し上げる要因となりました。そうなると、次第にサブプライム層の顧客獲得競争が激化し、末期には借り入れ時の金利が極端に低かったり、借り入れ当初は金利のみの返済だけでよかったり、場合によっては返済すらしなくてよかったりと酷い有様でした。

日本でもこういったことが起こる可能性があります。もちろん金利上昇と住宅価格の上昇まで到達することが必要条件ですが。でもそのとき、ひょっとしたら「日本人は真面目なひとしかいないから、ほとんどのひとは借金を返済する」といった笑ってしまうような理由で、最下層の人たちへの貸し付けに基づくCDOが最高格付けで取引されるかもしれません。じゃあ来るとしたら、それがいつ来るか?それはわかりませんが、平成バブルのときは株がピークアウトしてからしばらく地価が上昇し続けたことを憶えておいて損はないかもしれません。