2012年9月12日水曜日

不動産セクターで丸焦げになる方法

私がバリュー投資を勉強する前に読んだ本で、今でもとても役に立ったと感謝しているものがあります。それは金森重樹さんという人が書いた「借金の底なし沼で知ったお金の味」という本。この本のお陰で、それまでまったく興味がなかった簿記を勉強したし、金森さんみたいに20代で年利24%の借金を1億円以上負っても生きていればなんとかなるということも知りました。でもそれ以上に役に立っていることがあります。「新興デベロッパーには手を出すな」という教訓です。

金森重樹さんというひとがどういうひとなのかは全然知らないのですが、先に述べたような経緯があったあとで不動産業でお金を稼ごうと考えたとき、まずはデータを集めてデベロッパーの販売戸数ランキングの変遷を確認したそうです。そうしたところ、驚いたことに「財閥系・鉄道系以外のデベロッパーは、過去にどれだけ売上があろうとも10年でTOP10から消え去り20年で潰れる」ということに気づきました。



その理由は言われてみればアタリマエのことなのです。「買い」と「売り」の間が、マンションなら2年など長いことあいてしまうため、ちょっとでも市況が悪化すると販売価格に転嫁できずに資金がショートして潰れてしまう、というだけの話です。不動産も空売りが出来ればリスクヘッジができるのでしょうが、常に新興デベロッパーは清かさんが日記で買いてた『現物のみの「まる裸!!」』の状態なのです。私は世間知らずで当時は全くそういうことを知らなかったので、この事情を教わらなければ「潰れる銘柄」に手を出していたかもしれません。

実際にスクリーニングをかけると、しばしば不動産セクターの新興企業がよい条件で網にかかってきます。不動産は販売単価が大きいので楽に上場規程をクリアできるというのもあります。そしてその多くが振興のマンションデベロッパーなどですが、念のため決算報告書とか財務諸表とかを確認してもあまり魅力を感じないことが多いし、先のような事情もあるので最近はついつい「不動産セクター以外」でスクリーニングをかける様になってしまいました。

そんな特殊な不動産セクターで勝つためには、当然ですが財閥系の総合デベロッパーを狙うのが一番良いのではないかと思っています。三井不動産(8801)、三菱地所(8802)、住友不動産(8830)のいわゆる「総合デベロッパー御三家」です。不動産市況が悪くなると新興デベロッパーがバタバタと倒れていくので捨て値で物件獲得ができますが、現実的にそれを拾えるのはグループ内の銀行と太いパイプのある財閥系デベロッパーくらいなものです。あとは財閥系デベロッパー以外ならば、ショッピングセンター専業デベロッパーのイオンモール(8905)を狙うといういうのもありかもしれません。

これらの銘柄も、東証一部の平均PBRは0.8倍、不動産セクターの平均PBRでも1.0倍というこのご時世、それほど高くはなっていません。PBRで見れば三井不動産は1.20倍、三菱地所は1.52倍、住友不動産は1.62倍、イオンモールは1.71倍と、リーマンショック以前にPBRが3-5倍だったことを考えればそれなりに買いやすい株価です。今後、もし不動産市況が悪化し新興デベロッパーが次々と倒産するような事態になれば、つれ安でこれらの銘柄も大きく下げるはずです。(※例えば三井不動産はリーマン後一時900円割れ、PBR1倍割れを経験しています)そういったところを確実に拾っていくことができればとてもよい買い物になるのではないでしょうか。