2012年9月3日月曜日

なぜ恋人に振り回されない人は投資に強いのか?

バフェットは、市場のことを「情緒不安定なミスターマーケット」と呼びました。

ミスターマーケットはかなり頭がおかしい男です。私が「いやいやそれは高すぎて買いたくないですよ…」と言った次の日に、何を考えてるのかもっと高い値段で売りに来たかと思うと、「え!?なんでそんな安く売ってくれるの?アタマ大丈夫???」と思って買った次の日に、なぜかもっと安い値段で売りに来たりといったことは日常茶飯事です。

だから、投資家ならみんな知っていることだと思いますが、投資というのはポートフォリオの管理ではなく、自分自身の心の管理なのです。高値の次の日にもっと高くなれば、もう手の届かないところに行ってしまうのではないかと誰だって不安になります。安値で買った次の日に更に安くなれば、自分の買ったものの価値を誰だって疑います。根っから投資に強い人は、生まれつき冷たいハートを持っている人です。あの躁鬱気味のミスターマーケットに振り回されないくらいだから、恋人に振り回されるとか家族に振り回されるとかそういうのとは無縁の人なんじゃないでしょうか。



とてもそんな人間にはなれない、そう私が痛感したのは2009年のことです。いくつかの銘柄をあり得ない安値で大量に買いましたが、キツイ含み損が心配ですぐに損切りしてしまいました。逆にAIGもCitiは三ヶ月以上悩みましたが、結局買えませんでした。私はそういう普通の人間なので、欲望や恐怖、猜疑心といった自分の心の負の面(こういうのを難しい言葉で「保有効果」「現状維持バイアス」とかいうそうです)をどう管理したらいいか、色々悩みました。

私の経験から言うと、まずは自分の行動パターンを徹底的に研究するために投資日記をつけることが第一歩です。すると、どうやら自分は多くの場合「売りも買いも早すぎる」ということがわかりました。最初はこれを一生懸命克服しようと思いましたが、普通の人間な私には自分の心を押さえつけてゆっくりと売り買いするのはほとんど苦行です。

そこで少し発想を変えて、まずは自分の心を抑えずに買おう、ただしとりあえず買うのは欲しい量の1割だけにしておこうと考えを改めました。自分の買いたい株数を10分割して、まず1回目は安いと思ったときに1割だけ買う、そして2回目は1回目より安くならなければ買わない、3回目は2回目より、4回目は3回目よりも安く買って、買いたい株数の5割まで買い下がる。この方法ならば、早く買いすぎても含み損は抑えられるし、当時のAIGやCitiの様なコワイ株もとりあえず1割くらいならと気軽に買えます。

残り5割は?もしもミスターマーケットがご乱心で大きく値を下げたときのために余力として残しておく。下げたらもちろん買うし、下げなければ欲しい株数の5割で満足する・・・これならば、下げも上げも楽しみになって、心の余裕ができます。しかもそのためには経営と財務を納得いくまで徹底的に調べないとダメだし、どの水準ならば十分安いといえるかという感覚も鋭敏になっていきます。

同じ方法はオススメしません。多分、克服の方法は人それぞれでしょう。買いが遅い人は買いが遅い人なりの克服のしかた、損切りができない人は損切りができない人なりの克服のしかたがあると思いますが、皆様の参考になりましたら幸いです。