2012年9月6日木曜日

巨大クレジットバブルが崩壊したら絶好の買い場が到来する?

ITブームのとき「ニューエコノミー」という素敵な言葉が流行りました。ITによって在庫調整が進んで景気循環はなくなるとか言ってました。サプライチェーンマネージメントなんて言葉が流行ったのもこの頃です。誰かが「ニューエコノミー」なんて言い出した頃、ドラッカーはすぐさま「90年前にもそんなこと言ってたな〜」と返したとか。

デカップリング論なんて言葉も流行ったことがありました。アメリカが景気後退しても、経済規模の拡大した新興国がなんとかしてくれる!!というものだったと思います。でも世界は以前よりも更に結びつきが強まる一方。ギリシアやスペインが風邪をひいただけで中国が動揺するというのに、アメリカが死んだらまさか人類が滅亡するのでは?と思わせるほどです。

サブプライムローンブームなんてのもありました。貸し倒れになりそうなボロボロの住宅ローン債券を詰め合わせにして、ご丁寧にリボンまでつけて市場に流すとなぜかAAA金融商品になるというイリュージョン!結果は世界を恐怖のどん底に陥れ、リーマンブラザーズを吹き飛ばし、クライスラーを叩きのめし、あやうくシティとAIGまで消し飛ぶ寸前まで行いきました。



でもそんな破滅的な発明も、ジャンクボンドブームを知っている人から見れば、ああまたか、企業の債券が住宅ローンに変わっただけかと思う程度の手垢のついた発想でした。人間の考えることなんてその程度のもので、今なら同じ様に「投資不適格のソブリン債を詰め合わせにして桐箱にいれてノシをつけたら安全資産になって、ソブリン危機を乗り切れるんじゃないか?」とか考えてる人もきっといるでしょう。私がその手の金融商品に詳しくないだけで、既にあるのかもしれませんが…

これらのことに共通してるのは、みんな「今回の件は例外だ」「今回だけは違う」という「特異点論」がはびこっていたことです。でも、文明が生まれて5000年、人間の営みは何ひとつ変わっていません。先に述べたようなことは、有史以来、形を変えて何度も繰り返してきたことです。だから、世界で一番商売が上手なユダヤ人が世界で一番熱心に歴史を勉強する民族であることは単なる偶然ではないでしょう。

今、日本やその他の先進諸国について言われている大きな「特異点論」が2つあります。「経済発展を終えて現状維持か緩やかな縮小の時代に入る、だからもはや長期投資に妙味はない」という論と、「先進諸国は少子化が定着し人口が減少し続ける、だから土地は下がり続ける」という論です。これらの論を補強する証拠は、ちょっと賢そうな人たちを捕まえれば数限りなく教えてくれます。

しかし、近代経済が生まれて400年、いくつものバブルが生まれ崩壊して、その度ごとに栄光の時代は終わったと言われてきました。でもチューリップ・バブルが絶頂の1637年よりも今のオランダが貧しいと誰が思うでしょうか?20世紀初頭の世界恐慌で人類の繁栄は終わったという人がどれだけいるのでしょうか?人口だって経済発展とともに増加をするのが人類の常でした。氷河期や疫病、戦争などを除けば、どの国も人口は一貫して増え続けてきたのです。

上の2つの「特異点論」は、短期的には正しいでしょう。世界的なクレジットバブルは縮小に向かうでしょうし、生命表を書くまでもなくアメリカ以外の先進国の労働人口が減り続けるのは明白です。しかし、それが半永久的に続く先進国の宿命であるという考えは疑ってかからなければいけません。人類は我々凡人には予想もつかない解決策を常に見つけてきたのです。だから私は、多くの人が不安に思っていても、株や土地は安い時に買っておいて平気だと安心しています。

アメリカのITバブルの始まりはアメリカが双子の赤字に苦しみ低迷した80年代の文化そのものでした。次の「始まり」は「終わり」の後に来るのではなく、いつも「終わり」と共に訪れるのです。今、世界規模のクレジットバブルが崩壊しつつありますが、それは新たな始まりでもあり、私の様な長期投資を行う者たちにとっては絶好の買い場となるでしょう。