2013年4月7日日曜日

「第二次朝鮮戦争」は本当に長期化しないのか?

巷では、韓国と北朝鮮が戦闘を再開するのではないかという物騒な噂が流れています。

戦争は兵士のみならず民間人の命も奪われる可能性が常につきまとうもので、あらゆる外交手段を講じて回避するべきもの、望むべきものではなく忌むべきものです。実際、オバマさんも習近平さんも「第二次朝鮮戦争」の勃発は望んでいませんので、外交での解決に努めるでしょう。しかし、だからといってそれは戦争にまつわるリスクに備えなくてよい理由にはなりません。北朝鮮の行動は日に日にエスカレートしており、韓国への攻撃に至れば否が応にもアメリカはこの戦争に巻き込まれてしまいます。戦争の起こる可能性が高まっているのならば、投資家はその戦争に向けてどう動くべきか予め考えておくべきでしょう。

いざ戦争が勃発したとき、投資家にとってまず重要になるのはいずれの国が勝利するかではありません。まずなにより、短期決戦になるか戦闘が長期化するかです。過去の事業家や投資家も、戦争が始まりそうになると「この戦争はすぐ終わるのか?何年も続くのか?」という情報を血眼になって求め、いち早く情勢を見極めることに腐心し、長期化が確実とみれば途方も無いレバレッジで大きな賭けに出る者もいました。例えば、鈴木商店の金子直吉は第一次大戦の勃発と長期化を見越して世界中で鉄を買い求め、鈴木商店を三井・三菱を凌ぐ大財閥にまで押し上げました。このときロンドン支店長の高畑誠一(後の日商会長)に打電した「BUY ANY STEEL, ANY QUANTITY, AT ANY PRICE.」(鉄ならどんな鉄でもいいから買え。金に糸目はつけるな。)の鬼気迫る文言は今でも語り草です。また、来島どっくの坪内寿夫はベトナム戦争の長期化を確信することで、日本の造船業社では唯一新造船の増産を強力に進めて巨利を得ました。もちろん、戦争や災害という誰かの不幸の上に大きな利益を得ようとする行為は非常に後ろめたいことで、私個人としてはやりたくないし他人にもオススメはしませんが。

それはさておき、「第二次朝鮮戦争」が起こったらどうなるのでしょう?電撃作戦で短期終結するのでしょうか?それとも長期化するのでしょうか?一般に、圧倒的な兵力、技術力、物量を背景にアメリカ・韓国の同盟軍が短期で平壌を陥落し体制が崩壊するといった筋書きが想定されています。実際アメリカも韓国もそういった見通しを立てているはずです。また、おそらく「第二次朝鮮戦争」が起こっても、中国は国際世論を優先し、あからさまに北朝鮮を支援することはできないでしょう。北朝鮮にとって極めて勝ち目の薄い戦いになることは間違いありません。

しかし過去を見返してみると、アメリカの戦争はしばしば見通しの甘いことがあります。古くは太平洋戦争。開戦当初、アメリカはまさか4年もの長期に及び日本が抗戦し続けるとは思っていませんでした。ベトナム戦争は空爆でアッサリ片が付くという見通しでしたが、地下に潜って抗戦を続けたベトコンには効果がほとんどありませんでした。ソマリア派兵は1年以上に及んだものの失敗に終わり、アフガン紛争もイラク戦争もぐだぐだになって長期化したのは記憶に新しいのではないでしょうか。もちろんクウェート侵攻に端を発する湾岸戦争の様に短期決戦が成功した例もありますが、これから起こるかもしれない「第二次朝鮮戦争」も短期間で終結すると信じるのは危険です。

いざというとき自分の財産をいかにして守ればよいか考えることに対しては何も後ろめたさを感じる必要などありません。例えば現金や現物の比率をある程度高めておくのもリスクに備える有効な手段です。あるいはバッファ効果を期待して戦時銘柄をいくつかポートフォリオに加えておくことも有効です。実際に「第二次朝鮮戦争」が起こるかどうかはまだわかりませんが、これを機に、金融緩和の波に乗って偏りが生じてしまったポートフォリを見直してみるのもよいかもしれません。