2013年2月11日月曜日

オーストラリアの大富豪が「タイタニックII」を中国の造船所に仮発注!?

日本海事新聞 2012年2月12日(火)
 オーストラリアの大富豪が悲運の船「タイタニック」を模したクルーズ客船「タイタニックII」を中国の造船所に仮発注し、2016年にも就航させる-というニュースが昨年4月に報じられ、一時は業界をにぎわせたことがある。その後、「デザインコンセプトができた」「運航船社の立ち上げ準備が始まった」などの続報が流れた。今度は、今月16日夜にマカオのリゾートホテルで「タイタニックII」の構想を説明するディナーパーティーが計画されているといった情報が入ってきた。(中略)
 しかし、その後の関係者の調査によって、新船を仮受注したとされる中国・江蘇省の長航重工金陵造船所には「同船のような豪華な客船を建造する技術も能力もない」ことが判明。厳しい経営環境下にある中国造船の受注競争を浮き彫りにした形となった。(以下略)

 オーストラリアの富豪が悪趣味なのはおいといて、中国の造船所側について日本は笑ってばかりもいられません。日本の産業界だって昔は「やったことのない仕事」を請け負って、それをちゃんとこなして成長してきたのですから。韓国の産業界も、作れもしないビルや橋を受注して今にいたってます。韓国の場合は未だにちゃんとこなすことができず世界中に多大な迷惑をかけてますが・・・。「できるかどうかわからない仕事」を請け負うというのは成長期の国や企業につきもので、こうした仕事を通して信頼を獲得していくものです。ソニーだって京セラだってそうやって大きくなったのでした。

 中外運長航重工金陵船廠にはRORO船、タンカー、コンテナ船、ばら積み船などで実績がある造船所で、パナマックス級のばら積み船を建造することのできる技術と能力は十分にあります。全長269.1m、総トン数46,328トンのタイタニックに匹敵する大きさの船体を建造することはおそらく可能なはず。・・・とはいえ、貨物船と豪華客船とでは建造の難しさ、建造コスト、造船所の請け負うリスクと何一つとっても全く別物です。ましてや巨大豪華客船のレプリカを建造するとなれば、更に特殊な技術が必要となるのではないでしょうか。イーユンの個人的な意見としては、普通のクルーズ船すら一度も作ったことのない状態での受注は無謀だった様に感じられます。でも、もしかしたら・・・と、少しだけ思わないでもありません。

 大型クルーズ船は受注額が1隻あたり10億ドル超にもなりますが、三菱重工のダイヤモンドプリンセス号建造のときのように一度火災を出せば数億ドルにも及ぶ損失を出すことになり、よほど体力のない造船所でもない限りそのまま建造自体が頓挫することになるでしょう。工程が複雑な分、そうした事故の可能性も格段に上がり、それ相応の管理体制が問われます。金陵船廠は本気でタイタニックIIの建造を進めるならば、中小規模のクルーズ船を並行して受注することで技術的な蓄積を図らなければなりません。逆に、地道な努力を積み重ねて本気で建造を進めていくならば、中国の豪華客船建造への参入は韓国(というかSTXが買収した欧州の造船所)や日本、ドイツなどにとって脅威になるでしょう。